突然ですがみなさん自作PCを組むときに部品は何を基準に選んでいますか?
今までずっと静音性とメンテナンスのしやすさが最重要項目だったのですが、2021年の9月に今までとは少し違うコンセプトで自作PCを1台組み立てました。そのメモ+1年を経ての長期レビューです。
いままでの自作PC
いままで依頼も含めて10台以上組んでいますが、ほとんどの場合、静音性とメンテナンスのしやすさを重要視してパーツを選定していました。特にケースはFractal DesignのDefineシリーズをよく選んでいました。
Defineシリーズの多くは、以下のような特徴があるのでとても気に入っています。
- ATXサイズのマザーボード対応で大体のマザーボードが入る
- 本体がしっかりしていて比較的剛性のあるつくりになっている
- 吸音材が貼ってある物が多いので蓋を閉めれば動作音が気になりにくい
- 全面や底面にはフィルタがついていて掃除がしやすい
Define R6 USB-CのケースでPCを組んだときの様子です。価格重視のケースだとケースの上に何かを置くのは不安になるようなものもあったりしますが、このケースは動作確認時にPCの上に一時的にモニタを置いても不安にならないぐらいしっかりとした作りになっていました[1]OSインストールをして動作確認を終えたら、安全のためモニタは机の上に移動しています。このスタイルで常用はしていませんし、推奨するものではありません。。
今回の自作PC
自作PCのパーツの選び方は色々あると思いますが、私はまずコンセプトからスペックを決めて、次にケースを選び、残りのパーツを選ぶと言う順で構成を決めています。残りのパーツは金額順に決めることが多いです。
最終的な構成
最終的には以下の構成としました。総額209,377円でした。GPUは今(2022年8月末時点)の方が安いですね……
※表内の「購入時価格」は2021当時の価格です。
分類 | メーカ | 商品名 | 個数 | 購入時価格(円) | 小計 | 参考価格(円) |
---|---|---|---|---|---|---|
PCケース | Thermaltake | The Tower 100 Snow Edition | 1 | 11000 | 11000 | 11000 |
CPUクーラー | サイズ | 虎徹 Mark II | 1 | 3400 | 3400 | 終売(後継品は4018) |
電源 | Corsair | RM750x White -2018-750W | 1 | 15655 | 15655 | 16980 |
マザボ | ASRock | H570M-ITX/AC | 1 | 19171 | 19171 | 14980 |
メモリ | Crucial | DDR4-2666 16GB×2枚 | 1 | 14556 | 14556 | 13309 |
グラボ | 玄人志向 | GK-RTX3060-E12GB/OC/WHITE | 1 | 67778 | 67778 | 55527 |
CPU | Intel | Core i7-10700 | 1 | 36358 | 36358 | 40980 |
SSD | Western Digital | WDS500G2B0A-EC | 1 | 7313 | 7313 | 終売(後継品は7714) |
OS | Windows 10 Pro | 1 | 26980 | 26980 | 終売 | |
SATAケーブル | SilverStone | SST-CP08W | 1 | 1078 | 1078 | 1078 |
ファン | Cooler Master | MasterFan MF120 Halo White Edition | 2 | 2000 | 4000 | 2300 |
PWMファン用延長ケーブル | Cable Matters | PWMファン用延長ケーブル | 1 | 999 | 999 | 999 |
CPUグリス | 親和産業 | SMZ-01R | 1 | 1089 | 1089 |
当時のメモを元に、選定するのに必要な(必要だった)前提知識と、どう選定したかについて記載します。
前提知識
フルカラーLED
ゲーミングPCでよく使われるパーツにはフルカラーLEDが搭載されているものがあります。それらは、ソフトウェアから制御できるようになっている場合があります。
ソフトウェアからフルカラーLEDを制御する際の通信はいくつかの方法があります。基本的に有線通信ですが、各社共通の規格と独自の規格の2つあり、その中で各社共通の規格は3ピンのARGB端子を使うものと4ピンのRGB端子を使うものの2種類に分けることができるようです。
3ピンのARGB端子については5VとGNDと信号線、4ピンのRGB端子は12VとRGBそれぞれ1ピンずつ割り当てられているようで、互換性はなさそうです。
(おそらく3ピンのARGB端子についてはNeoPixelあるいはその互換のLEDが使われているのでしょう)
光るファンの場合はLED用の配線とファン自体の配線の2本が必要になります。配線についてはデイジーチェーン接続できる場合もあるようです。3ピンのARGB端子についてはデイジーチェーン接続できるようになっているものを複数見かけました。
条件
今回は今までとは少し趣向を変えて小型で中身が見える白色のPCを組んでみることにしました。具体的には以下の条件で組むことにしました。
- フットプリントは30cm四方程度以下
- ケースは白色で中身が見えるもの
- ケース以外のパーツもできる限り白色
- 外付けでGPUが搭載可能
- 小型のケースだとCPU内蔵の物を使う前提のものがあるため、それは避ける
- 機械学習用途で使えるスペック
- CPUは最新または1つ前の世代のIntel Core i7またはAMD Ryzen 7以上
- GPUはRTX 2070 SUPER相当以上でビデオメモリが8GB以上
- メインメモリは32GB以上
ケースの選定
先述のDefineシリーズは中身が見えない構成のものが多く、見えるものでもサイドパネルのみが透過素材になっているものが多いようです。いままで組んできたPCは中は見えないケースで、中のパーツは光るかどうかは気にしないことが多かった(むしろLEDをOFFにできるものをあえて選んでいることもありました)ので、今回は方向性が大きく違います。
白のケースで調べていると下記の記事にたどりつきました。「なんだか3Dプリンタみたいでいいな(?)」ということでこのThermaltakeのThe Tower 100 Snow EditionでPCを組む前提で部品を選定することにしました。
使ったことない上に実物を見たこともないケースです。ケース以外のパーツを選定する前にPCPartPickerにて組み立て例を調べてみました。今回初めてこのサイトの存在を知ったのですが、様々なパーツの使用例が投稿されており、見ていて飽きません。The Tower 100 Snow EditionについてはRyzen 7, Ryzen 9, Core i7, Core i9など排熱の多いCPUとGPU併用での使用例もあり、機能的にも問題なさそうと判断しました。
※後述しますが、ケースに付属のファンはうるさかったので(個体差なのかどうかは不明です)CPUクーラーに付属していた静音のファンと取り替えています。
CPUとマザーボードの選定
最終的にはCPUは当時型落ちになったばかりの第10世代のIntel Core i7-10700を選択しました。マザーボードはケースのフロント部分にあるUSB Type-Cポートを含む全USBポートを活かせるものを基準に選定しました。
USB Type-Cポートは、廉価グレードのマザーボードだと省略されていたりします。また、Mini-ITXサイズだとマザーボード搭載のUSB Type-Cポートはあるけれども、ケースのUSB Type-Cポートを使用できない(フロントUSB用のポートが省略されている)ものが多くあるようでした。そのため色に拘っている余裕はなく、色は無視して機能面だけで選択しました。
今回選定したマザーボードにはフルカラーLED制御用には3ピンのARGB端子を使うものと4ピンのRGB端子どちらの端子もあります。ARGB端子かRGB端子のどちらか一方しかないマザーボードもあるようでしたので、選定する際には注意が必要そうです。
8 フェーズ Dr.MOS 電源設計
DDR4 5066MHz (OC)
1 x PCIe 4.0 x16
CPUはちょっと妥協しています。本当は当時最新だった第11世代のCore i7を買おうと思っていたのですが、入手困難で諦めました。そこでRyzenを選定しようとしていたのですが、Ryzen対応のMini-ITXのマザーボードでケースのUSB Type-Cポートを使用できて納得行くものが見当たらず、型落ちのIntelのCPUを選定することになりました。
GPUの選定
GPUはこのケースだとかなり目立つ部分です。白色のGPUがあることがわかったのでその中から予算内で一番いいもの選びました。今回選定したのはRTX3060のメモリ12GBモデルです。RTX3080などもありましたが、予算オーバーでした。
今回選定したGPUには「+12V RGBヘッダー」が搭載されていると商品ページに記載がありました。マザーボードの4ピンのRGB端子と接続してLEDを制御することになります。
電源の選定
GPUがRTX3060はTDPが170Wで、推奨電源が600Wとのことなので600W以上の白の電源を選定します。小さいケースで配線の余裕はそんなにないため、フルモジュラー(すべての配線はコネクタで付け外しできる)タイプを選択します。本当は電源はほとんど見えないので黒でもよいのですが、ケーブルは白であってほしいので、白い電源にします。
白の電源はそんなに種類はなかったので、Corsairの80PLUS Goldの750Wモデルを選択しました。
RMx White Series RM750x — 750 ワット 80 PLUS® Gold 認証の完全モジュール式 PSU
CPUクーラーとファンの選定
CPUクーラーは簡易水冷と空冷で迷いましたが、空冷にしました。ケースサイズの都合で簡易水冷でもファンが1枚のみとなってしまい、この場合はあまり冷えないという口コミを見かけたためです。
※未検証です。もしかしたら簡易水冷の方が冷えるかもしれませんが、1年経った今も空冷で困ってません。
最終的にCPUクーラーはサイズの虎徹 Mark IIを選択しています。虎徹に付属のファンはケースファンとして使い、CPUクーラーには光るファンを使っています。
光るファンは様々ありますが、せっかくなので横から光っているのが見えるファンがいいなと考え、ファンはCooler Masterの120mmサイズのものを選定しています。フルカラーLEDはマザーボードの3ピンのARGB端子と接続するタイプです。ケース底面とCPUクーラーに1枚ずつ使用しています。
空冷のCPUクーラーは真っ白なカバー付きのCooler MasterのHyper 212 LED Turbo White Editionも選択肢にありましたが、ファンのLEDが白単色であることから、ファンを取り替えるとなるとさらにコストがかかるので没になりました。「見栄えはある程度であとは使えればいいや」ということでこのあたりはかなり妥協しています。後述しますが、妥協しても個人的にはここは気になっていないのでこの判断は良かったと思います。
メモリとストレージの選定
ここはそこまで目立たないので見た目については適当に選定しました。PCIe接続のSSDにするつもりでしたが、別の用途で買ってまだ使っていなかったWestern DigitalのSATA接続のSSDがあったのでそれを使用しました。
メモリについては白いカバー付きで光るものもありますが、予算オーバーになってしまうので光らず目立たないものを選定しました。ブラウザ開いたままにしたりするので32GB(16GBを2枚)です。
SATA接続のSSD接続のため、SATAケーブルも白の物を選びましたが、ほとんど見えないのでここはマザーボード付属のものでも何でも良かったです。
CPUグリスの選定
非伝導性のものでレビューが良かった物を選定しました。こだわりはありません。
PC組み立て
組み立てはかなり苦労しました。マザーボード上で隙間やケース内の余裕があまりないためです。例えば、ケースのサウンドインターフェースの配線は先に接続しておかないとGPU接続後は配線できないなどのトラブルに遭遇しました。普段は大きめのケースにある程度余裕のあるマザーボードを使用しているためここは盲点でした。
組み立てを実施した2021年8月末は、緊急事態宣言が発令されており、自由に出かけて遊べるような雰囲気でもなかったので、ステイホームでPCを組むのにちょうど良かったです。上記の通り今まででは想定すらしてなかったトラブルに遭遇してたので途中の写真は撮影しそびれました。
組み上がったPCのサイズはこんな感じで比較的コンパクトです。一緒に写っているのはMacBook Air 13inchです。
こんな感じで光ります。
1年間使ってみた感想
トータルでは満足しています。
詳細を書く前に現状の使い方について記載します。
4Kモニタを2枚接続して使っています。PCは足下に置いています。そのため普段はPC本体をあまり目にすることはありません。
良かった点は以下の通りです。
- 小型なので足下に置いても邪魔にならない
- HDMIなどのポートが背面ではなくケース上面にある
- 壁際に寄せておいても配線が邪魔になりにくく、便利
- RTX3060のGPUメモリ12GBモデルなので深層学習用にも使いやすい
- CADもサクサク動くスペック
- メモリが32GBなのでブラウザのタブを開きっぱなしにしても支障が出にくい
- ケース前面のUSB Type-Cポートは便利
マザーボード背面の端子とGPU背面の端子にアクセスできる
微妙な点は以下の通りです。
- 今まで使ってきたケースと比較してファンの音が聞こえやすい
- エアコンがついていればかき消されて気にならない程度
- フィルタはついているが(いままで使ってきたケースと比較して)外しにくいのでメンテナンス性はさほどよくない
コンセプトについて
コンセプトについて「小型」はメリットで挙げたとおりなので、満足しているところです。また、小型ケースを選んだため、ケース上部から背面ポートにアクセスできるという事前には気にしてなかったメリットがありました。使ってみると便利です。
※小型ケースの中でもケース上部からポートにアクセスできるのは一部のものだけのようです。
コンセプトの「ケースは白色で中身が見えるもの」については正直微妙でした。誤解のないように書いておきますが、組んだ直後は見た目にも楽しかったです。しかし、実際には部屋のレイアウトの都合で机の上に置くのが難しいので、足下に置いており、ほとんど普段は見えないような設置になっています。そのため、「見栄えにこだわった意味とは…」というのが正直なところ、と言う意味で微妙でした。そもそも机の上に置こうとしていない時点で、性格的にあまり見た目を気にしておらず、このコンセプト自体が向いてなかったかも…という気がします。これがわかっただけでもチャレンジしてみてとても良かったと思っています。次にPCを組むことがあれば恐らく静音性についてを重視して、見た目はそこそこにするような気もします。
参考ページ
↑1 | OSインストールをして動作確認を終えたら、安全のためモニタは机の上に移動しています。このスタイルで常用はしていませんし、推奨するものではありません。 |
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