FETを電源スイッチの代わりに使用する方法メモ

FETを電源スイッチの代わりに使い、回路の電源への電源供給をオンオフする方法を最近知りました。
@b4rrAcud4さんと話した際に教えてもらい、大変便利だったのでシェアします。

回路への電源供給をスイッチのON/OFFによって切り替えたい。でも、使いたいスイッチは定格電流が小さくて使えない……。
そんな状況のとき、このFETを電源スイッチの代わりに使用する方法が大変便利です。

目次

概要

今回紹介するのは、スイッチ単体ではなく、スイッチを接続したFETを電源スイッチの代わりに使用する方法です。

部品の選び方と接続方法について紹介します。

PchのFETを選ぶべきなのか、NchのFETを選ぶべきなのかについての話も少しだけ触れていきます。

なぜこの方法を使うか

一般的にサイズの小さいスイッチは定格電流が小さく、モータなど大電流を必要とする回路を駆動する際に用いることはできません。

今回の手法では、回路への電源供給をFETによってON/OFFするのでスイッチの定格電流が小さくても問題ありません。

スイッチではなく、マイコンから別回路の電源供給をON/OFFする際にも使用できます。

調べてみると、この方法はマイクロマウス界隈ではよく使われる手法のようです。
参考:
FETの使い方 – からくり工房I.Sys wiki
https://sites.google.com/site/karakuriisys/home/document/how_to_use_fet

新マウス機体 MIZUHOv2
http://idken.net/posts/2017-04-01-mizuhov2/

RaspberryPiMouse_Hardware/RaspberryPiMouseV2_circuit.pdf at master · rt-net/RaspberryPiMouse_Hardware
https://github.com/rt-net/RaspberryPiMouse_Hardware/blob/master/supplement/RaspberryPiMouseV2_circuit.pdf

さらに電源の逆接防止回路としても機能させることができます。
ラジオペンチ Pch MOSFETによるハイサイド電源スイッチと逆接防止回路
http://radiopench.blog96.fc2.com/blog-entry-668.html

使用例

使用部品

今回は部品をRSコンポーネンツから探してみます。
国内に在庫がある場合も多いので発送までが大変スムーズです。
注文した翌日には部品が届くことも多いです。
本州でしか受け取ったことがないので、もしかしたら届くまでの時間については本州以外では状況が異なるかもしれません。

今回は、押しボタンスイッチ(大きいものは大電流を流すこともできますが、なるべく小さなものを探しました)を使い、電源を直流12V、最大電流1Aとする回路をオンオフしたい場合を想定します。
RSコンポーネンツで見つけた押しボタンスイッチは以下の通りです。


フジソク TPL プッシュボタンスイッチの絶対最大定格(一部)

項目 定格
コンタクト定格電流 100 mA
定格電圧 30V dc
最大接触抵抗 50 mΩ (銀コンタクト)、100 mΩ (金コンタクト)

このスイッチは小さいので、小さな基板に実装する際にもとても便利です。
定格電圧は30Vなので問題ありませんが、最大電流は100mAなので、今回使用する1Aの回路には使用できません。
ここで、PchのFETの2SJ668を電源のスイッチ代わりに使います。余談ですが、2SJ668はNRND(Not Recommended for New Design)、つまり、新規設計非推奨になっています。趣味で数個使うなら特に問題はないと思いますが、大量に扱う際には在庫数に注意が必要です。


2SJ668の絶対最大定格(一部)

項目 定格
最大連続ドレイン電流 5 A
最大ドレイン-ソース間電圧 60 V
最大ドレイン-ソース間抵抗 170 mΩ
最大ゲートしきい値電圧 2V
最大ゲート-ソース間電圧 -20 V, +20 V

FETを選ぶ際、まず

  • 最大ドレイン-ソース間電圧が使用する電源の電圧を上回っている
  • 最大ゲート-ソース間電圧がゲートを操作する電圧を上回っている

ことを確認します。今回はどちらも電源供給の12Vを超えており、問題ありません。

次に

  • 最大ゲートしきい値電圧がゲートを操作する電圧(今回は電源電圧)を下回っている

ことを確認します。今回は12Vを下回っているので問題ありません。

細かいところでは、ゲート入力電荷量だとかドレイン-ソース間オン抵抗だとかを確認する必要がありますが、とりあえず、12VでこのFETを制御することができます。

回路図

PchのFETを使用して回路への電源供給をON/OFFする場合、次のように接続します。

NchのFETを使用して回路への電源供給をON/OFFする場合、次のように接続します。

注意事項

どちらの場合も電源の電圧がそのままFETのゲート・ソース間に印加されます。
データシートに書かれているゲート・ソース間電圧の絶対定格を超えないように気をつける必要があります。

FETはNchかPchか

少々細かい話になってしまいますが、使用するFETはPchかNchかという話に触れたいと思います。
ネット上ではどちらも見かけますので、初めて使う際はどちらを選ぶべきなのか迷いました。
(今回は正電源(基準電位はGND、0V)を使う前提とします。)

入手性

一般的にNchのFETとPchのFETでは、NchのFETの方が入手性がよいです。
ほぼ同じ定格電圧、定格電流だったとしても、
筆者の観測範囲内では、NchのFETの方が安い場合が多いです。
ネット上でも「NchのFETの方が多く見かける」という様な情報を見かけるので同じだと思います。

接続方法

Pch

Pchの場合は次のように接続します。

FETのゲートが開いていないと(オフになっていると)Vccが駆動対象回路から切断されます。GNDは接続されたままです。

Nch

Nchの場合は次のように接続します。

FETのゲートが開いていないと(オフになっていると)GNDが駆動対象回路から切断されます。Vccは接続されたままです。
基準電位となるGNDが切断されているため、ほかの回路と接続することができません。

Pch?Nch?

FETによって電源をON/OFFする回路が、完全に独立していますか?また、そのほかの回路と接続する予定はありませんか?

  • ない -> PchでもNchでもどちらでも良さそうです。
  • ある -> GNDを共通化すると思いますので、PchのFETを使うことになりそうです。

まとめ

FETを電源スイッチの代わりに使用する方法を紹介しました。
今回紹介する方法では、回路に供給される電源をFETによってON/OFFしています。FETを駆動できれば(最大ゲートしきい値電圧がFETのゲートを操作する電圧を下回っている)、スイッチでもマイコンでも問題ありません。
そのほかの回路と接続する予定があればPchのFETを用いればよく、そうでなければNchでもPchのどちらのFETを用いても問題なさそうです。

更新履歴

2018年7月22日

FETを用いる理由(なぜこの方法を使うか)を書き足しました。

2017年11月30日

言い回し等のミスを@blessingyukiさんにご指摘いただき、修正しました。ありがとうございました!

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この記事を書いた人

Memotekiの管理人です。このブログには学んだことや共有しておきたいことをマイペースにメモしていきます。2020年からは日記も書き始めました。

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